民法第177条と背信的悪意者
Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却した後、Aが重ねて甲土地を背信的悪意者Cに売却し、さらにCが甲土地を悪意者Dに売却した場合に、第一買主Bは、背信的悪意者Cからの転得者であるDに対して登記をしていなくても所有権の取得を対抗できる。
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解答 ×
(出典)05年問25(2)
A ⇒ C(背信的悪意者) ⇒ D(悪意者)
↓
B
177条の「第三者」に関する問題ですが、背信的悪意者からの譲受人が悪意者という事例です。
まず、繰り返しになりますが、177条の「第三者」とは、「当事者もしくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺(けんけつ)を主張する正当の利益を有する者」です。
具体的には、悪意者は第三者に当たりますが、背信的悪意者は第三者に当たりません。
設問は、背信的悪意者Cからの譲受人が悪意者Dという事例です。
判例は、「Bとの関係でD自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、Dは177条の第三者として保護される」(最判H8.10.29)としています。
背信的悪意者であっても権利自体は有効に取得しています。その後の譲受人も同様です。
そもそも、背信的悪意者が177条の「第三者」に当たらない理由は主に信義則(1条2項)です。
そうすると、悪意者自身が背信的悪意者に当たらないのであれば、信義則に反するとは言えず、177条の「第三者」に該当すると考えても良いという結論になります。
したがて、Bは登記なくしてDに対抗することはできません。