労働条件の明示(労働基準法第15条)
「所定労働時間を超える労働の有無」は、労働基準法第15条第1項の規定により使用者が労働契約の締結に際して労働者に対して明示しなければならない労働条件の一つとされており、また労働基準法第89条において、就業規則のいわゆる絶対的必要記載事項ともされている。
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解答 ×
(出典)H13年問5C
労働契約締結時における労働条件明示事項と就業規則の記載事項を比較させる問題です。
「所定労働時間を超える労働の有無」は、労働契約締結時における労働条件の絶対的明示事項に該当します。したがって、設問の前段部分はその通り正しいです。
一方、就業規則の絶対的必要記載事項には該当しないため、設問後段は誤りとなります。
よって、本問は誤りです。
下記に条文を掲載しておきますので、この機会に一読してみてください。
参考条文
労働基準法第15条(労働条件の明示)
1 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
3 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第89条(作成及び届出の義務)
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
(1) 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
(2) 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(3) 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(3の2) 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
(4) 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
(5) 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
(6) 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
(7) 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
(8) 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
(9) 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
(10) 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
ポイント
労働条件の絶対的明示事項と就業規則の絶対的必要記載事項を比較させる問題は今後も出題確立が高いと思います。
お手元のテキストにある比較の表などをうまく活用すると効率的です。
ポイントは、就業規則は原則として事業場全体に適用されるもの、労働契約は個々の労働者に適用されるものだということです。
このため労働契約の絶対的明示事項の方が範囲が広いです。
例えば、本問の「所定労働時間を超える労働の有無」は、事業場の中の個別の労働者によって取り扱いが違うことはよくあることです。
よって、労働契約締結時における労働条件の絶対的明示事項に該当しますが、就業規則の絶対的必要記載事項には該当しません。
このように考えると、記憶しやすいと思います。
労働条件の絶対的明示事項にのみ該当するもの
・労働契約の期間
・就業の場所、従事すべき業務
・所定労働時間を超える労働の有無
※労働条件の絶対的明示事項にのみ該当し、就業規則の絶対的必要記載事項には該当しません。
関連問題
労働契約の締結に際し、使用者は労働者に対して賃金、労働時間等の労働条件を明示する必要があるが、その際、就業場所や労働時間に関することはもとより、退職手当や賞与に関する事項も書面で明示する必要がある。
(出典)平成11問2D
解答 ×
退職手当・賞与については、相対的明示事項(定めがある場合には明示しなければならない)に該当します。
そして、相対的明示事項は、書面による明示事項から除かれています。
したがって、「書面で明示する必要がある」とする本問は誤りです。
※相対的明示事項に加え、絶対的明示事項の中の「昇給に関する事項」についても書面による明示は必要ありません。
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